今回紹介するのは、東京丸の内にある三菱一号館美術館で6月27日〜9月6日にわたって開催されている「画鬼・暁斎(きょうさい)」展です。

美術館として2010年に生まれ変わった三菱一号館は、そもそも日本近代建築の父とも言われる建築家、ジョサイア・コンドルによって設計されました。

明治政府の「お雇い外国人」として来日したコンドルは、ニコライ堂や旧岩崎邸をはじめ数多くの建築物を手がけました。また、現在の東京大学工学部建築学科の教授として明治から昭和にかけて活躍した多くの日本人建築家を育てたことで知られています。

コンドルは日本美術をはじめとする日本文化に傾倒し 英語の著書を通じて日本美術を海外に紹介する日本文化のスポークスマンのような役割も果たしていました。そのコンドルが師と仰ぎ、終生尊敬した画家がこの河鍋暁斎だったのです。
コンドルが暁斎に弟子入りしたのは暁斎50代、コンドル20代と言いますから親子のような師弟関係だったのでしょう。
30も年が離れていたにも関わらず二人の親交は厚く、コンドルは暁斎から自身の暁とコンドルの故郷である英国を合わせた、 暁英(きょうえい)という画号まで授けられています。

暁斎はコンドルのことを「コンデエル君」と呼んで非常に可愛がったらしく、その様子は暁斎が毎日つけていたという絵日記にもしばしば登場し、その親密な関係が垣間見えてきます。

最初に展示されているのは、「枯木寒鴉図」。暁斎がこの作品に100円という破格の値段をつけたため、「鴉一羽にしては高価すぎる」と言われましたが、「これはこの一羽に対してではなく、これまでの修行に対する対価である」と嘯いたという話が残っています。この言葉を意気に感じて購入したのが榮太樓本舗の細田安兵衛で、現在も榮太樓総本舗の所蔵です。この「百円鴉」によって、暁斎は市井の狂画(風刺画・戯画)作家から本格的な狩野派絵師であるとの評価をかちえたそうです。

暁斎の魅力が存分に伝わって来るのが、「暁斎絵日記』です。
暁斎は毎日絵日記をつけていました。 墨で走り描きされた絵日記には多彩な人間模様が、ユニークな筆致で表されています。
またこの展示のある1室の壁側のガラスケースの作品は、旧コンドル所蔵のものばかりとか。

「柳に白鷺図」、「柿に鴉図」これは隣り合わせで展示されています。墨のコントラストで対象に迫る技術は、絶妙なものがありました。
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チラシの絵に使われている、「鳥獣戯画 猫又と狸」は後期のみです。同じ「鳥獣戯画」シリーズの「動物行列」(明治)も「前期」はなかったはず。
また、今回はメトロポリタンが所蔵する作品がまとまって見られる貴重な機会。「猿」などの動物を描いた作品がとても多く、猿や鹿は森狙仙の描き方を研究したのではと思います。
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「蟹の綱渡り図」(明治前半)、「新板かげづくし 天狗の踊り」(慶応3年)などは、暁斎の持ち味が十分に発揮された傑作だと思いました。

「秋冬山水図」こうした水墨画も秀逸です。
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「月に狼図」は、月を背景に狼が人間の生 首をくわえる絵ですが、月の光と生首がとてもリアルで、おどろおどろしくて、本当に凄い絵だなと思いました。

「風流蛙大合戦之図」の蛙の動きや表情は細部までよく描いており、とても面白く拝見しました。
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暁斎展の最後は「美人画」で締めくくられます。この展示室に飾られている、「横たわる美人に猫図」(明治前半)と「美人観蛙戯図」(明治前半)は暁斎の代表作ではないでしょうか。

ポスターの「惺々狂斎画帖(三)」(20図のうち)は、後期展覧会の最後に展示されています。
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展示の途中に大きな垂れ幕に写し取られた絵とがあって、そこでは写真撮影も可能です。巨大な猫の出現に、男二人がびっくり仰天してのけぞっている、現代のマンガに通じる作品ですね。
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今回の展示を見て、暁斎は狩野派はもちろん、浮世絵、文人画、円山派などさまざまなジャンルの画風を学び、江戸から明治へと繋がる時代の変化の中で、ユーモアと知性兼ね備えた多くの作品を残した、多彩な才人だなと思いました。妖怪、骸骨、動物、美人・・・、どれも暁斎ならではの作品として仕上がっており、とても上手い画家だなと思いました。
私は二回行きましたが、まだ足を運んでいない、という方は後期だけでも是非!
ショップでは暁斎が描いた骸骨をあしらったTシャツやぐい飲みなどのグッズも充実していますので、こちらもお見逃しなく。
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画鬼・暁斎—KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル
会期 2015年6月27日(土)~9月6日(日)*展示替えあり
前期:8月2日(日)まで/後期:8月4日(火)から
開館時間 開館時間:10:00~18:00
(金曜と展覧会会期最終週平日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで

※館内の撮影は主催者の許可を得て行っています。