国際交流基金(ジャパンファウンデーション)開催の、「なぜ、今、宗達なのか」を考えるシンポジウムに参加してきました。

2015年10月に米国、ワシントンDCで開幕する「俵屋宗達」展(仮称)を記念し、3月22日に本展の日米両国のキュレーター及び学術委員会の委員が、宗達の謎に迫るとともに、ゲストパネリストに画家の山口晃氏を交え、討論を行うというとても贅沢な企画です。

キュレーター
古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)、ジェームス・ユーラック(フリーア|サックラー美術館シニア・キュレーター)
学術委員会
奥平俊六(大阪大学大学院教授)、仲町啓子(実践女子大学教授)、ユキオ・リピット(ハーバード大学教授)

シンポジウムの間、東京藝術大学所蔵の«雲龍図屛風»(複製)
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«伊勢物語図»が特別展示されていたほか髙橋憲正氏(宝生流シテ方能楽師)のに謡が2回入り、雰囲気を盛り上げました。

キュレーター古田亮先生から概要説明。最初は琳派展との話もあったそうですが、アメリカ側の要望もあって宗達展になったそうです。先生はアメリカでいきなり宗達が受け入れられるか?と思ったとも。
アメリカ、日本、ヨーロッパ世界中から宗達の絵が集まる貴重な展覧会になるそうです。

ユーラックさんは、フリーアと日本美術との出会いを中心にお話いただきました。フリーア美術館はデトロイトの実業家、チャールズ・ラング・フリーアによって設立されたもの。国立スミソニアン協会の一部で、アジア美術専門の美術館です。
フリーアは1895年に初来日し以後1911年まで来日し、1906年に松島図を購入したそうです。フリーアはコレクションを米国連邦政府に寄贈するにあたって、その条件として館外への貸し出しを一切禁じたため、これらの名品を見るためにはフリーア美術館に行かなければならないのです。 また、借用品も展示してはならないとされています。
約4万点の所蔵品のうち1万2千点が日本美術とか。
当時パリではアールヌーボーの時代で光琳が人気でしたが、フリーアは山中商会などの美術商から絵を購入します。1901年~1907年の間はフェノロサもアドバイザーだったとか。宗達が日本で一般に知られるようになったのは大正時代のことでした。

その後学術委員会の各氏のトークが続きます。
奥平氏:
・風神雷神のヘアバンドは出雲の阿国歌舞伎からきているのではないか
・鶴下絵和歌巻は書のあとに金銀を塗っている。
・鹿下絵和歌巻はいつくかに断裁されたが、後半部分はまとめてシアトル美術館にあり、今回出展される。
中にいくつか下手な鹿あ書かれている。弟子が書いたともいわれるが、まったくおくしたところがないので、おそらく光悦がかいたのでは?
・これだけ公家、天皇などにも絵を献上しているほどの画家の生没年不詳は不思議。著名人のご落胤ではないか?とも思っている。
仲町氏:
・松島図も多くの琳派の画家が描いているが、明治39年に日本を出たためあまり知られてない。もともと大阪堺の祥雲寺にあった。
・朱色を使っていないため全体に明るいイメージ・千重波、うずまき形、波頭などさまざまな波が描かれる。藤田美術館の玄奘三蔵図にも同じような波がある。
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・季節感がなく、名所絵でもない、豊祝ぎの海ともいえる絵
・光琳百図には別の松島図がでてくる。
ゲストの山口晃氏:
・宗達の絵は野太さと繊細さが両方ある。画面に意識が集中していない。
・雲龍図屛風と鶴下絵和歌巻は同じ画家の絵と思えない。奥行きを出さずに色と形で画面の秩序を構成。

宗達がアメリカでどのように受け入れられるか楽しみです。
今年のお正月はアメリカに行こうかな?という気になってきました。
シンポジウムの様子はustreamでもご覧になれます。
http://www.ustream.tv/channel/jfair